リーガルブログ

法律関連

法律に関する情報はこちらから。 法律改正やその他業務に関するお知らせを公開していきます。

相続対策で養子縁組は認められる?

2017年02月10日

こんにちは

 

寒いですねー!

今日は前々から予報されていたとおり、鹿児島でも雪が降りましたねsnow

市内中心部は、積もるほど降ってはいませんが、吉野などはかなり積もったようです!

バスもチェーンをつけて走ってましたbus

今週末も寒いようですので、事故などお気をつけ下さいませ!

 

 

さて今日は前回に引き続き、最高裁での決定をご紹介いたします。

 

新聞にも取り上げられていたので、見られた方も多いとは思いますが、節税対策で養子縁組をした場合、その養子縁組は認められるのか?という内容で、裁判が行われていました。

 

詳細は割愛しますが、亡くなられた方のお孫さんを生前に養子縁組し、法定相続人を増やしたことによる節税対策を行った結果、他の相続人であるお子さんから無効であると主張され、その是非を問う裁判でした。

 

法廷では、「相続税節税という動機と養子縁組に必要な『縁組の意思』は併存し得る」と指摘。今回は「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」と判断して縁組を有効としたとのことです。

 

節税対策はいくつかの方法がありますが、この方法では法定相続人を増やし、基礎控除額や生命保険の非課税枠などが増えるというものです。

また税率も人数が増えれば低率になるため、養子縁組は対策になるとされてきました。

もちろん上限なく増やせるという訳ではなく、実のお子さんがいる場合は1名まで、いない場合は2名までが法定相続人としてみなされます。

 

 

富裕層の方を中心にされてきた相続税対策なのですが、もちろんデメリットもあります。

 

今回の件のように、他の相続人の法定相続分は当然のように減ります。

もらえるはずだった額より少なくなるので、当然文句が出てもおかしくありませんし、誰かの子どもを養子へとなれば、選ぶ過程でもめる原因になるかもしれません。

結果として遺産分割がまとまらない場合も十分考えられます。

 

また、税金的にはお孫さんの相続税が20%増になります。

この結果、逆に多く税金を払ってしまうということもありえます。

 

あとは、養子縁組をすると姓が変わってしまう場合があります。

おじいちゃんの姓を名乗ることになりますので、各手続きにおいて名義変更が必要となります。

日常の生活においてはこちらが一番デメリットとなりそうです。

 

 

養子縁組をして対策をする場合は、税理士さんなどとシュミレーションをし、きちんとご家族の同意を事前に得ておくことが大事だと言えます。

 

お金のことは話づらいことだとは思いますが、亡くなった後に争族となってしまい、どうしようもできなくなることもあります。

税金対策ももちろん必要だと思いますが、もめないための対策を考えることがもっとも大切なことだと思います。

 

事前に準備をしておくことで、ご自身だけではなく、残されたご家族も安心して過ごすことができます。

当事務所でもお手伝いできることはたくさんありますので、お気軽にご相談ください。

 

 

それではまた!

預貯金も遺産分割の対象に?

2017年02月03日

こんにちは

 

今日は節分ですが、もう豆まきはされましたか?

ある地方では、「ふくはうち、おにもうち」というところもあるそうですよflair

おにさんも毎年そとに出されてしまうので、どっかではうちに入りたいですよねw

 

今日のお昼を買いにスーパーによったのですが、恵方まきが山のように売られていましたw

しかし、皆様買われていたので、今日は恵方まきのご家庭が多いかと思います!

今年は、北北西らしいので、その方角に向いて食べましょう。

 

 

 

さて、今日は去年でた最高裁の判決をご紹介いたします。

ご存知の方も多いとは思いますが、確認の意味もこめてご覧下さいませ。

 

最高裁大法廷は、2016年12月19日預貯金と遺産分割に関する重要な決定を下しました。

参考:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

預貯金と遺産分割については、2004年(平成16年)の最高裁判例等で、原則として、預貯金は、被相続人の死亡により、相続人らに、当然に分割されて、遺産分割の対象とはならないとされていました。しかし、上記最高裁大法廷は、それらの判例を変更して、預貯金も遺産分割の対象となると判断して、「原決定を破棄する。本件を大阪高等裁判所に差し戻す」と決定しました。

 

詳しくは、上記のURLを見ていただければと思うのですが、難しいので、要点だけざっくりとですがご説明します。

 

上記にも書いていますが、今までは預貯金は相続人に対し、法定相続分で分割され、単独でもその請求ができていました。ただ実務レベルでは、本当に相続人かどうかや遺産分割が行われていないかなどが分からないため、相続人全員の同意をもらうというのがほとんどの金融機関さんの対応でした。

今回は、実務に近づいた感じですね。

 

今回の決定で、預貯金についても遺産分割の対象となることがはっきりしました。今後は、遺産分割が終了するまでは、口座が凍結されてしまい、お金を引き出せなくなることが考えられます。

預貯金について、早期の現金化を可能としたいのなら、遺言書の作成をしておいて、遺言執行として受け取ることとするか、あるいは、遺言代用信託の設定、生命保険契約の締結等の事前措置をしていて、実質的に現金を取得することとするかなどが今まで以上に必要なものとなってくることが考えられます。

 

これまで以上に、事前の準備が必要になってきそうですね!

 

 

でもみなさん、事前準備って何かされていらっしゃいます?

さまざまな方面で、事前にしておかないといけませんよーというお話を聞くと思います。

また「相続」や「終活」に関する関心やニーズも高まっています。

しかし、実際に手立てをされていらっしゃる方は、まだまだ少ないのが事実です。

 

 

今はまだいいやと思いがちですが、気づいたときにはもう手遅れというケースもよくあります。

当事務所でも、もっと前にお話を聞いていれば・・・という方が大勢いらっしゃいます。

早めに相談しておけば、後から「知らなかった・・・」ということもありません。

 

 

少しでも悩んでいる方がいらっしゃれば、当事務所までお気軽にご相談くださいませ!

 

 

それでは良い週末をshine

第7次医療法改正の概要です

2016年10月03日

こんにちは

 

日曜日は小学校の運動会でしたねsun

近くの方々が終わって家へ帰っていくのを見かけましたw

皆様、さながらキャンプに行ったような、テントやクーラーボックスを抱えていらっしゃいました!

 

10月とは思えないほどの暑さでしたね・・・

熱中症にはなりませんでしたか?

まだまだ暑いそうなので十分にお気をつけくださいm(__)m

 

そして鹿児島は台風が近づいておりますtyphoon

こちらも十分に警戒してください!!

 

 

さて今日は法改正の情報です。

今回は医療法の改正のお知らせです。

平成28年9月1日と平成29年4月2日の2段階に分けて施行されます。

 

概要に関しては、詳しくは厚生労働省の下記のリンク等を見てみてください。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000080739_6.pdf

 

当事務所に関わってくる内容としては、医療法人制度の見直しに関する改正内容です!

ガバナンスの強化がなされ、今まで明確にしていなかった理事会の設置・権限や役員の選任方法等を医療法に規定して明確化されました。

 

これにより、今まで医療法人の役員登記の際に、理事や理事長の選任方法として明確な規定がなかったため、定款を添付していたのですが、原則不要となりました。

ただ理事会議事録の署名押印を理事長と監事に限定する定めがある場合や理事会が書面決議による場合は定款の添付が必要とのことです。

 

医療法人に関わっている方は、私たちよりよくご存知だと思いますが、今一度ご確認の意味もこめてご紹介でした!

 

 

 

それではまた!

新しく「株主リスト」が添付書類として必要になります!

2016年08月10日

こんにちは

 

本日は、会社法及び商業登記規則の改正の情報をお伝えさせていただきます。

現在、お仕事をいただいています方々にも関係のある内容となりますので、一度お読みいただければと思います。

 

以下、変更内容です。

平成28年10月1日以降の株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請に当たっては,添付書面として,「株主リスト」が必要となる場合があります(商業登記規則61条2項・3項,投資法人登記規則3条,特定目的会社登記規則3条)。

 

株主リストの添付が必要となる場合
株主リストの添付は,次の2つの場合に必要となります。 ※1

1 登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合

2 登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合 ※2

※1  株式会社のほかに,投資法人,特定目的会社も社員のリストの提出が必要(その他の法人は不要)です。
※2  登記事項につき,株主総会決議を省略する場合(会社法319条1項)にも,株主リストの添付が必要です。

 

株主リストの内容
1 登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合 ※3
株主全員について次の事項を記載した株主リスト

(1)  株主の氏名又は名称
(2)  住所
(3)  株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
(4)  議決権数
➡ これら4点を代表者が証明

※3 登記すべき事項につき,種類株主全員の同意を要する場合には,種類株主全員についての株主リストが必要です。

2 登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合 ※4
●議決権数上位10名の株主 ※5
●議決権割合が2/3に達するまでの株主 ※6
・・・いずれか少ない方の株主について,次の事項を記載した株主リスト

(1)  株主の氏名又は名称
(2)  住所
(3)  株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
(4)  議決権数
(5)  議決権数割合
➡ これら5点を代表者が証明

※4 登記すべき事項につき,種類株主総会の決議を要する場合には,当該種類株主についての株主リストが必要です。
※5 自己株式等の当該事項につき議決権を行使することができない株式を除きますが,株主総会に欠席し,又は議決権を行使しなかった株主を含みます。
※6 2/3に達するまでの株主は,議決権割合の多い方から加算していく必要があります。

 

詳しくは、法務省のサイト等にも記載されていますので、ご参考にしてみてください。

 

 

上記のとおり、平成28年10月3日以降に申請し、株主総会議事録が添付書類となる場合は株主リストの添付が必要となります。

そのため、当事務所より株主に関する情報をお伺いすることになります。何卒ご協力の程、よろしくお願い致します。

 

 

何かご不明な点等がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

【お知らせ】不動産登記における法令等改正

2015年10月30日

こんにちは

 

今日は一日中雨模様なお天気でしたねrain

一日中雨は久しぶりで、また肌寒い日でしたので、体調崩されないようにしてくださいませm(__)m

明日はせっかくのハロウィンですが、お天気が心配ですね・・・

いまやこの時期の一大イベントとなっていて、仮装する人も増えていますよねflair

ただ終わった後のゴミが結構ひどいそうなので、マナーを守って楽しみましょう!

 

さて、本日はお知らせです。

以下をお読みくださいm(__)m

 

平成27年11月2日より、不動産登記の申請において、資格証明書の取り扱いが変更になりますので、お知らせいたします。

不動産登記等の申請をする場合に、申請人が法人であるときは、登記申請書にの会社法人番号を記載することになります。

これに伴い、法人の代表者の資格証明書(登記事項証明書)の添付は不要となります。

資格証明書を添付する代わりに、法人番号を申請書に記載することによって、登記官が法務局の端末で調査してくれるようです。

今まで膨大な登記事項証明書の取得に対して、費用・手間の負担が大きかったと思いますが、軽減されることになります!!

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今まで必要だったものが、法人番号を記載することでOKになりました!!

H27.11.2より変更となりますので、この件に関してご質問がある方は、ご連絡くださませm(__)m

 

 

それではよい週末を!

法の日週間

2015年10月02日

こんにちは

 

 

10月に入って、クールビズからネクタイ&スーツに戻した方もいらっしゃいますよね?

しかし鹿児島はまだまだ暑い日が続いていますので、まだクールビズの方も多いかと思います。

いつ戻すかは結構悩みますよねw

皆様はもうクールビズ卒業されましたか?

 

 

さて本日はお知らせもかねたご連絡です。

10月1日は、「法の日」となっております。

最高裁判所、検察庁、日本弁護士連合会の震源により法務省が1960年(昭和35)年に制定されました。

そして毎年10月1日から7日までの1週間は、「法の日週間」と定められています。

全国で無料相談会が開催されるのですが、もちろん鹿児島でもさまざまな場所で開催されます。

詳しい日程と場所は下記リンクよりご確認ください。

「法の日」無料相談

予約無料だそうですので、お気軽に参加できるようになっております。

 

専門の司法書士に相談するのは…という方やとりあえず聞いてみたいだけという方は、ご利用されてみるのもいいかと思います。

その中で、やっぱり専門家に相談したほうがいいなと思えば、専門家へご相談するという段階を踏むためにも利用できると思います。

司法書士や弁護士と聞くと、どうしても近づきがたいイメージがありますが、もっと身近に感じてほしいと思っておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

 

 

ではよい週末をm(__)m

 

 

 

【お知らせ】会社の名称・所在地のご確認を!

2015年09月07日

こんにちは

 

まだまだ暑いですが、いかがお過ごしでしょうか?

今年はシルバーウィークは日程がうまくあってお休みが多いですよね。

この連休にどこか行かれる方も多いのではないでしょうか?

 

 

しかし、その前にご確認していただきたいことがございます!

 

 

マイナンバー制度が始まるのは皆様ご存知かと思います。

個人には、特定の13桁の番号が振り分けられ、それに基づき行政手続きが行われます。

 

さて意外と知られていないかもしれませんが、法人にも番号が振り分けされるというのはご存知でしょうか?

株式会社などの「設立登記法人」のほか、「国の機関」「地方公共団体」「その他の法人や団体」に対して1法人1つの法人番号が指定されます。

ちなみに、法人の支店・事業者等や個人事業者の方には指定されません。

法人番号は個人と違って公表されます。

インターネット等で見ることができ、ダウンロードもできるようになるそうです。

 

マイナンバー制度によって公表される情報は、法人番号の指定を受けた団体の①商号又は名称、②本店又は主たる事務所の所在地及び③法人番号の3項目(基本3情報)です。

役員、目的、株式等は公開されませんので、登記簿を確認する必要があります。

 

それに伴い、株式会社等の設立登記法人が、名称・所持地の登記の変更手続を未済の場合、法人番号指定通知書に変更前の名称・所在地が記載され、変更前の所在地宛に送付されたり変更前の情報が公表されてしまう恐れがあります。

そのため法人番号の通知開始前(平成9月末)までに登記の変更手続を確実に実施してくださいというお知らせが国税庁のほうに掲載されております。

詳しくはコチラを!!↓↓↓

マイナンバー法人番号.pdf

 

もし会社の名称や住所を変更したけど、登記していないという会社様がいらっしゃいましたら、速やかに登記の手続きをしてください。

鹿児島に所在地がある企業は、鹿児島地方法務局に申請します。

変更手続に関しましては、司法書士が代理で行うこともできます。

 

法人番号の詳細は、法務省のホームページをご覧ください。

 

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それではまた!

民法改正...最終回

2013年11月02日

1 チョコレートは美味しい?

こんにちは博多の花田です。私はよく衝動買いをするタイプなのですが、買って失敗したということが結構あります。映画『フォレストガンプ』でフォレストが「Life was like a box of chocolates. You never know what you're gonna get(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない)」といった通り、予想を上回る品質を持つこともあれば、がっかりして言葉も出ないなどといったこともあります。ただ、最低限これだけは必要だという一線はあるでしょう。車なら安全に走るとか、家ならきちんと雨風しのげて地震にも耐えられるとか。ただ厄介なことに、商品が高度になればなるほど外見からだけでは欠陥商品か否かの見分けはつかなくなります。

不味いチョコレートならまだしも、食べる事さえできないチョコレートを買ってしまったときのお話が今回のテーマです。

2 瑕疵担保責任と債務不履行

民法570条・566条によると「売買の目的物に隠れた瑕疵(傷・欠陥)があったときは」買主は「損害賠償請求」と「契約の目的を達成できないときは契約の解除」ができるとなっています。そして、これらの権利行使は「買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない」とされています。これを一般に「瑕疵担保責任」といいます。ただ、目的物に「隠れた瑕疵」があれば契約の債務不履行ではないかという気もします。

他方、民法415条には債務不履行の場合は損害賠償ができる旨、民法542条・543条には同じく解除ができる旨規定しています。これはどう考えたらいいのでしょうか?

この場合、売買に関しては民法570条の瑕疵担保責任が債務不履行の場合の特則(特別な規則)として優先的に適用されます。ではなぜ債務不履行の一般原則があるにもかかわらず、瑕疵担保責任という特則を置いたのでしょうか?

3 法定責任説

ここに関しては長いこと対立があるのですが、一番影響がある(あった)説は、「法定責任説」です。人呼んで「「特定物のドグマ」。「特定物」とは、具体的な取引に際して当事者がその物の個性に着目して指定した物のことを言います。例えば、牛を購入するとき「このAという名前の牛」といえば特定物となりますが、「牛5頭」といえば不特定物となります。「ドグマ」とは独断・偏見的意見という意味です。

特定物は代えの利かないこの世に1つだけのものですから、極端な話その物に欠陥があったとしても、それもまたその特定物の固有の性質に外なりません。したがって特定物の売買はその物を現状のありのままの姿で引き渡せば十分であって、特定物に欠陥があったとしても債務不履行は発生しない。

すなわち、欠陥商品をもらっても、債務不履行を原因として損害賠償や契約解除ができなくなってしまいます。それでは困りますから、民法570条を債務不履行の特則として定めて、特定物売買のトラブルの解決を図る。その責任が「法律」を根拠にするとして法定責任説です。

4 契約責任説

しかし、中古車(特定物)を買って欠陥があったとします。これもその車の性質だから契約上の責任は発生しない、というのはおかしな話です。特定物であったとしても、一定の品質を有する物を供給する旨の合意が、契約当事者間にあるのが通常だからです。したがって、民法570条の責任は契約上の責任であるという考え方が一番素直ということなり、これを「契約責任説」といいます。現在の支配的な考え方です。

すると不思議なことに入口に戻ってきてしまいました。債務不履行も契約責任ですし、瑕疵担保責任も契約責任ですから、同じ契約責任に対して二重の異なる定めがあるということになります。しかもこの2つは救済手段の中身が異なります。

 

救済手段

権利行使期間

債務不履行

解除・損害賠償・完全履行請求

10年

瑕疵担保責任

解除・損害賠償

1年

債務不履行にだけ存在している完全履行請求とは、要するに修理や取替えをしてくれと請求するものです。特定物売買の瑕疵担保責任には存在しません。ですから、民法とは別に、特約として修理ができる権利を契約内で定めておく必要があります。

また、特定物売買(この倉庫にあるこの袋に入った米の売買)の場合には瑕疵担保責任が適応され権利行使期間は1年なのに、不特定物売買(たとえば何でもいいから米30キロを売買する)の時には債務不履行規定により10年であるのかを合理的に説明することができません。

5 より合理的な規定へ

これらの問題点を踏まえて中間試案では以下のような規定を提案しています。

① 売主が買主に引き渡すべき目的物は、種類、品質及び数量に関して、当該売買契約の趣旨に適合するものでなければならない、と規定して「隠れた瑕疵」という言葉を廃止する(特定物に限定されていません)

② ①に違反するときは、完全履行請求ができる

③ ①に違反するときは、債務不履行の一般原則の規定に従い損害賠償請求又は契約解除ができる

④ ②の請求をしても相手が応じない場合は、③の権利を放棄する代わりに代金を減額する請求ができる(瑕疵担保責任では請求できませんでした)

⑤ 権利行使期間については、2つの案があり、甲案は特別の規定を置かず消滅時効の一般原則にゆだねる。乙案は1年の期間制限を定めるが、売主が契約の趣旨に適合しないことを買主に通知すれば権利を保存できる。(瑕疵担保責任では、訴訟に準じる手続きをしなければならなかったのに比べて、通知のみで権利が保存できます)

これらによって、売主の救済手段の幅が広がり、①の規定から特定物と不特定物で行使できる権利の内容・期間が異なるという不合理が解消されます。

6 最後に

一応今回のブログを持って、民法改正についての私のレポートは終わりにします。これから国会に上程され審議がなされていくことになりますから、あくまでもこれらは提案に過ぎません。しかし日本に現民法が制定されて約120年間の判例や研究の成果が盛り込まれているわけですから、大いに批判し議論を深めていきたいところです。

社会生活を規律するルールである民法の改正は、様々な影響を及ぼし得るものです。ですから決して政治家・官僚・専門家だけの議論で終わらせるわけにはいかないのです。私たちの問題なのですから。

追伸:私の長-い長-いブログにお付き合いいただいた方、大変感謝申し上げます。次は、信託について書こーかなーとぼんやり思っています。ではまた(^^)/~~~

実は法律より文学大好き花田

民法改正パートⅧ

2013年10月25日

1 盛者必衰のことわり

こんにちは博多の花田です。社会情勢というのはめまぐるしく変化します。昨日の常識が、明日の常識である保証はどこにもありません。恋人や奥さんの愛情だって、何もせずともいつまでも変わらずそこにあると思ったら大間違いです

平家物語には 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。奢れる者も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂に はほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。」とありますが、確実なものなど世の中にあるのだろうか、と不安に思う時が私にはあります。

2 お金払ってくれるよね?

なんにせよ、人は不安を抱かずには生きておられない生き物です。では次のような場合はどうでしょうか? 自分が会社を経営していて特殊なネジを製造 していたとします。毎月ネジを1万個納品する契約を1年契約で結んでいるお得意先があるとします。ネジ代金は後払いです。しかし、ある日知り合いの銀行員 から「あの会社はもうもたないよ」という話を聞かされました。実際、危険な状態のようです。

皆さんは、どう思うでしょうか? 私なら「あの会社にこのままネジを納入して本当に代金を払ってくれるだろうか?」と不安に思うに違いありません。 しかし、今までのところきちんと支払をしてくれているので債務不履行により契約を解除するわけにはいきません。ではこのまま契約通りネジの納入を1年間は 続けなければならないのでしょうか?

3 不安の抗弁権

そこで現れたのが「不安の抗弁権」といわれるものです。多くの裁判の中で認められたものですが、今回の民法改正の中にも盛り込もうという提案がなされています。その内容は

①双務契約(お互いに何らかの義務を負っている契約)において、自分のほうが先に債務

を履行しなければならないとき以下の要件を満たす場合にその履行を拒むことができます。

②相手方に破産手続開始申立て等その他の事由があったことにより、①の債務の見返りとなる給付(反対給付)が履行されないおそれがある

③破産手続開始申立て等その他の事由が契約締結後に生じたものであるときは、それが契約締結の時に予見することができなかったものであること

④破産手続開始申立て等その他の事由が契約締結時にすでに生じていたものであるときは、契約締結時に正当な理由により知ることができなかったものであること

要件は非常に厳格です。というのも、安易に不安の抗弁が認められてしまっては、契約社会が成り立たなくなってしまいます。それに、不安の抗弁権を行 使された得意先は、ネジが手に入らなくなり事業を行うことができなくなりますから、不安の抗弁権が引き金となって倒産を速めてしまう事態になりかねませ ん。

4 状況はめまぐるしく変化する

不安の抗弁権と似たようなものに「事情変更の法理」というものがあります。事情変更の原則とは、「契約締結後、その基礎となった事情が、まったく予 想不可能な形で変化してしまったため契約の履行は可能ではあるものの、そのままの形で履行することが過酷なので、契約の解除又は改定を認めるもの」と定義 できます。

私が、毎年クリスマスツリー用の樅ノ木を友人に届けてお金を30万円もらうという契約をしたとします。凄い契約ですが(笑)。毎年私は頑張って樅ノ 木を仕入れてきたのですが、突然樅ノ木が先物取引の対象となってしまい価格が10倍になってしまったとします。今まで仕入れ値が10万円だったのが100 万円になってしまったわけです。今まで通り、樅ノ木を仕入れ代金30万円だけもらっていたのではやっていけません。この場合、樅ノ木以外の木で勘弁しても らうか又は代金を値上がり分を考慮して120万円に改定してもらう若しくは契約を解除するのが良いのではないでしょうか。契約締結時に、こんなに樅ノ木が 値上がりするとはだれが予測できたでしょう。

5 批判があるのは当たり前

「不安の抗弁権」「事情変更の法理」ともに危険性をはらんだ権利であることは疑いようがありません。特に事情変更の法理はそうです。「状況が変わっ たから契約をストップして又はなかったことにして若しくは内容を変更して」非常に単純化して言えば、そんな権利です。これでは、何のために契約を結ぶのか わからないではないか、安易に使われて濫用されるおそれがある、との批判ももっともと思います。一方で、非常に特殊な事例ではありますが、通常の債務不履 行手続きや危険負担では解決できないケースでも「不安の抗弁権」「事情変更の法理」であれば上手い解決ができるケースがあるのも事実です。だからこそ、過 去の裁判例の中でこれらの権利が取り上げられてきたのです。

非常に危険な権利で濫用のおそれがあるので、民法に明文化するべきではなく裁判所の個別の運用に任せる、と考えるのも一案。逆に、そのような権利だ からこそ民法の中で明確にその要件を規定して、安易な濫用を許さないように法で縛りをかけるというのも一案。このあたりの論点も、裁判所の解釈にゆだねて おくことが果たして透明性や明確性の観点から正しいのかという依然論じた問題に行き着くようです。この議論は、「危険だから持たない・持たせない」VS 「危険だからこそきちんとコントロール下におこう」という軍事や原子力等でなされている議論と同じ根っ子を持っている気がします。

実は楽天家の花田

民法改正パートⅦ

2013年10月18日

1 世の中何が起こるかわからない

こんにちは、博多の花田です。私、最近運動不足なものですから一緒に散歩をしてくれる犬を飼ってみようかと考えています。思い切ってセントバーナードがいいでしょう。ペットショップを覗いてみると、なかなか賢そうな奴がいるではありませんか。購入から引き渡しまでは2週間かかるとのことです。

そうはいっても考えてしまいます。縁起の悪い話ですが、このセントバナードが引き渡しまでの間に疫病で死んでしまうかもしれません。ペットショップの不手際でセントバーナードが脱走し行方不明になるかもしれません。私が気に入ったのはまさしくこのセントバーナードであって、ほかの犬では全くダメなのです。これを一般に、履行不能といいます。そんな時、どうするの?というのが今回のお話です。

2 契約に拘束されて

以上のような履行不能があったとしても、私はペットショップにお金を支払わなければならないのでしょうか? このままであれば支払う必要があります。契約に拘束されるからです。ではどうすれば支払を免れることができるでしょうか。それは契約を解除することです。ここで民法543条の出番となります。債務不履行(履行不能)解除の規定です。

「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

なんですと! 債務者の責めに帰すことができないときは、契約の解除ができない!!!セントバーナードが、不慮の疫病で死んでしまったときはペットショップに責任があるとは言えませんから、契約は解除できないということになります。これを過失責任主義といいます。過失とは、いろいろな意味があるのですがここでは、落度といった意味であると思ってください。

3 危険負担

上記のように、履行不能に関して誰も責任が無いような場合はどうすればよいのか? ペットショップがセントバーナードを引き渡す責任というものは、目的達成が不可能である以上消滅します。一方、私の代金支払い義務は危険負担という制度により処理されます。民法534条には

特定物に関する物件の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰すことができない事由によって消滅し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する」

特定物とは外に替えの利かない、私が買おうとしたこのセントバーナードのことを言っていると思ってください。

要するに、セントバーナード引き渡し債権が消滅した責任を債権者である私が負え、と法律は言っています(これを債権者主義といいます)。犬はなくとも金払え...あんまりです。ということで裁判実務もこの債権者主義は過酷すぎるということで、なるべく適用範囲を小さくするような解釈がされていますが、そもそもこの規定に存在意義があるのかという批判を浴びています。

4 債権者を契約から解放しよう

中間試案では、履行不能の場合の扱いを、債務者に過失があれば債務不履行規定で処理し、過失がなければ危険負担規定で処理する従来のあり方をやめにします。

原則として、履行不能があれば、すべての契約は解除できるものとして、債務者の過失の有無を考慮事由から外しています。履行不能という言葉も「履行請求権の限界事由」という履行不能より広い概念に置き換えられています。これは、物理的不能(燃えてなくなったので引き渡せない)だけでなく、社会通念上の不能(金貨を海に落としたので引き渡せない)や契約の趣旨からして不能(ピアニストが演奏会を開催する契約を結んだが、当日子供が事故で重体になったためピアノ演奏をすることができない)をも含みます。

これは、契約解除を、債務を履行不能に陥らせた債務者に対する罰ではなく、債務の履行が受けられない債権者を契約の拘束から解放する制度であるという、認識の変化が前提にあるわけです。

逆に言えば、債権者を契約の拘束から解放する必要がない場合、すなわち債権者である私が、実はセントバーナードと一緒にいると3分以内に心臓麻痺を起してしまう特異体質であったが、それをうっかり忘れて犬を買ってしまった、という私の過失のために引き渡しができない場合(引き渡したら私は死んでしまうのでお店としては渡すに渡せない)には、私に解除を認める必要はないということになります。

この場合は、危険負担によって処理されることとなります。履行不能が契約の趣旨に照らして債権者である私の責めに帰すべき事由によるものであるとき、債務者であるペットショップは履行請求権の限界事由があることによりセントバーナードの引き渡し義務を免れるとしても、債権者である私に代金支払いの履行請求することができます。

5 大事なのは契約の趣旨

ところで、中間試案を読んでいく中で良く目につく言葉があります。「契約の趣旨」という言葉です。債務不履行の損害賠償規定を定めた中間試案の民法415条は「契約の趣旨に照らして債務者の責めに帰すべき事由」があるかどうかで、損害賠償ができるかどうかを決めています。現行の民法415条には「契約の趣旨」という縛りはありません。この「契約の趣旨」というのは、「契約書にどのような内容が書かれているか」を表してはいません。これは、「契約の性質、契約をした目的、契約に至る経緯その他の事情に基づき、取引通念を考慮して定まる」広い考え方です。

契約法の規定は、そのほとんどが任意規定と呼ばれるものです。すなわち、当事者の合意によって自由に変更しても良いとされている規定です。ですから、民法が適用されるのは、当事者が契約の中で特別な合意をしなかった隙間部分ということになります。そうであるならば、民法の規定のみで契約当事者の法律関係を決めるようなことはせず、できうる限り契約の趣旨を反映させた解釈をしてその契約の隙間部分を埋めるべきだ、と考えることができます。その理念が「契約の趣旨」という言葉には込められているのです。

実は猫派の花田