リーガルブログ

民法改正パートⅡ


1 5%の高金利!

こんにちは、博多の花田です。みなさんは、銀行の預金金利が5%だったら、喜んでお金を預けるのではないでしょうか。しかし、そんな高金利を払ってくれる金融機関はありませんよね。ただ、民法には法定利率というものが定められていまして、なんとこれが5%という破格!?の高金利を約束しています。今回の民法改正では、ここにも改正のメスが入ろうとしています。

2 法定利率とは何ぞや?

みなさんが金融機関からお金を借りるとき、当然利息が何%か、お金を返せなかったときは遅延利息が何%か、を契約書に記載すると思います。お金と利息は、まるで光と影のよう常に一体です。このように見える形で記載がある場合は、法定利率の出番はありません。しかし、常に当事者の間で利息の定めをしているとは限りません。

たとえば、超人気の高価な腕時計を買って、お金を100万円支払ったとします。商品は現在品切で1年後に入荷する予定だったが、1年たっても腕時計は入荷されず、結局契約が解除になってしまいました(このとき業者は、腕時計が入荷されない可能性があることを知っていたとします)。この時、当然100万円を不当利得として返してもらうわけですが、はたしてそれだけで十分でしょうか?答えはNOです。100万円の利息も返してもらう必要があります。しかし、この場面で利息を何%にするかまで契約していることは、稀です。このような、予想不可能な事態に備えて、あらかじめ民法の中で定められた利息が法定利率です。

では、100万円の年利5%ということは、利子は5万円くらいでしょうか。銀行に100万円を1年間預金しても、こんなに利子が貰えることはないですから、どうでしょう契約の解除日を何かと理由をつけてもっと遅らせてみては。解除日が伸びれば伸びるほど貰える利子は銀行預金の利子に比べて多額になりますよ...。というのでは、世の中困ります。このような極端なことにはならないにしろ、民法に規定された利率と実体社会とのズレがこのような不健全さを生みだす場合もあるわけです。

3 固定から変動へ

住宅ローンも変動金利と固定金利があるように、金利は日々変動します。法定利率は民法の中で5%と規定がされていますから、大昔より一貫して固定金利ということになるでしょうか。しかし、これでは世の中の実態とかい離した数字になることが避けられません。法律は、そうそう簡単に変えられるものではありませんから。

かといって、毎日毎日法定利率がコロコロ変動するのも面倒に過ぎます。法律の機能には、予測可能性という機能があります。これは法律があるおかげで、このような行為をすれば、このような結果となるだろうというある程度の見通しを立てることができるようになるというものです。そのため、法定利率にもある程度の予見可能性・安定性が必要です。

以上の指摘を踏まえて、今回の民法改正の中間試案では、細かいところをはしおって言えば

法定利率を3%などからスタートさせて、基準日を定め、毎年0.5%刻みで改定する

という提案がなされています。基準貸付利率(旧公定歩合)を基準にして、この数字が基準日において0.5%以上変動するなら法定利率も0.5%刻みで改定させて、急激な変動を避けつつ、着実に実体社会に近づけようというものです。

4 裁判実務への影響やいかに

裁判実務の中では、法定利率が登場する場面が多くあります。損害賠償事件での和解などでも、法定利率による損害金の負担が考慮事項になります。上記のような改正がされれば、絶えず変動を続ける法定利率の動向に注意する必要があります。一番問題になり易い点は、利率適用の基準時をどこに置くかによって、利息の数字が変わってくることです。制度設計のあり方如何によっては、変動利率の基準時をめぐって紛争や訴訟実務の混乱が生じる可能性も否定できませんので、今後の改正に向けた議論に注視する必要があろうかと思います。

花田