リーガルブログ

民事信託とは?Vol.2


第2回 民事信託の考え方とは?

 

前回から民事信託に関して書かせていただいている矢切です。
少しずつではありますが、今回も民事信託について一緒に勉強していきましょう!

 

前回の記事については下記よりご覧ください。
http://legal-flag.com/blog/1.html

 

今回は、民事信託の考え方についてです。
民事信託はそもそもどういう考え方に基づくのかについて理解することで、実際に利用するときにイメージがしやすくなると思います。

 

まずは民事信託が可能になる前まではどういった考え方かと言いますと、

以前までの信託の制度的特徴として、

 

1.信託は財産分離方式による財産管理制度であること
2.信託の受託者に対して非常に厳しい権利義務を課す必要があること
3.受益者を手厚く保護する必要があること

 

の3点が挙げられています。

少し分かりにくいかもしれませんが、この考え方では、元の所有者である委託者が、受託者に対して財産の名義を移転させることが信託の絶対的な前提でした。
また、委託者にとっては他人である受託者に財産の名義を移転する関係上、受託者を厳しく規制し、かつ信託財産から利益を得るべき受益者を保護する必要があるのも当然であったと考えられます。

 

これは前回のところで述べさせていただいた、「信託」が絶対的な信頼関係の上で成り立つというところから考えていただければ、ご理解できると思います。

日本では、委託者と受益者が異なる信託(「他益信託」と言われています)は、贈与税が極めて高いことからほとんどなく、ほぼすべての信託が委託者=受益者という信託(自益信託と言われています)でした。

 

しかし信託法が改正されたことにより、新たな信託類型の創設ができるようになりました。
例えば、従来は別個の存在であったはずの「委託者と受託者」あるいは「受託者と受益者」が同一となる信託形態であっても差し支えないとされ、さらに、絶対に事前に特定しておく必要があった受益者が「まだ決まっていない」状態における信託の設定も可能となりました。

この考え方は、「委託者が受託者に対して財産の名義を移転し、受託者は受益者のために財産を管理・運用する」という従前の考え方では説明がつかないものです。

 

ちょっと難しくなってきていますが、皆様ご理解できていますでしょうか?

 

文章だけでは分かりにくいので、ここからは図を使って説明します。

 

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民事信託のもっとも大きな特徴は所有権の分割です。本来不可分であるはずの所有権を、物件的名義(所有者名義)と債権的内容(発生する各種権利)に完全に分割し、前者は受託者に対する名義移転、後者は受益者に対する贈与による権利移転がなされ、委託者がすべての権利を失うという考え方です。
もちろん、委託者には信託契約そのものを解除して元の状態に戻す権利を留保させることもできますので、委託者の方も安心して託すことができます。

 

さらに所有権自体の内容を分析しますと、1つの「所有権」という権利の中に、「所有名義」、「処分権」、「収益権」、「利用権」と分けることができます。

 

zu2.png

 

信託を使うことで、この4つの権利を併せ持っていた委託者から、それぞれ別々に受託者若しくは受益者に移転することができるものと考えることができます。

これは「名義と権利の分離」と呼ばれています。
委託者が1つの物として所有していた権利を分離・分割して受託者や受益者それぞれ持たせることができます。

 

ここまで専門用語がどんどん出てきて、良く分からないとなっている方もいるでしょう。

 

ここまでを要約すると、委託者が望むような財産管理方法を自由にとることができる制度であり、受託者は単に所有権の名義を預かるだけで、あとは受益者に対して一方的に義務を負うだけの債務者にすぎないという構成になります。

 

つまり信託の原動力は委託者の「願いと想い」であるということです。

しかし民事信託においては、一番最初の設計図を書き間違えると、思ったとおりの流れができませんので、せっかくの想いをカタチにすることができなくなります。

この方法を使ってみたいという方は、一度司法書士などの専門家にご相談されるのがいいかと思います。
当事務所でもご相談に乗ることができますので、お気軽にご連絡ください。

 

何かご不明な点や疑問点があれば、フェイスブックのほうに書き込んでいただければ、分かる範囲ではありますがお答えいたします。
まだまだ発展途上な方法ですので、一緒に議論をしながら理解を深めていければと思っています。

 

次回もお楽しみに!