リーガルブログ

民事信託とは?Vol.4


第4回 民事信託の種類について

 

民事信託に関して書かせていただいている矢切です。

もうすでに4回目なんですね。

いつまで連載するか先は見えていませんが、最後までお付き合いしていただけたら幸いです。


今回は民事信託の種類についてお話いたします!


前回の記事については下記よりご覧ください。
第1回 http://legal-flag.com/blog/1.html
第2回 http://legal-flag.com/blog/post_356.html
第3回 http://legal-flag.com/blog/post_369.html


一般的に次の8種類あるといわれています。

1.遺言代用信託
2.受益者連続型信託
3.自己信託
4.目的信託
5.事業信託
6.限定責任信託
7.担保権信託
8.受益証券発行信託


では1つずつ見て行きましょう!


1.遺言代用信託

これは委託者の死亡を条件に自益信託から他益信託になる信託設定方法、あるいは当初から他益信託とするが受益者が信託財産から給付を受けられる時期が委託者死亡以降であるとする信託設定方法です。

つまり、委託者兼当初受益者死亡後の受益者を決定しておく信託です。

遺言や死因贈与と比較してみると分かりやすいかと思います。

 

hyo1png.png

 


信託法をみてみると、以下のように決められています。

信託法
(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第90条 次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めとする。

一.委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二.委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託

第1号の場合は、当初は自益信託であり、当初受益権(兼委託者)の死亡によって、その受益権が第二受益者に相続されるような形となり、まさに遺言と同様の機能が発揮できます。

それに対して第2号は、当初から委託者と受益者が別人、すなわち委託者から受益者に対する生前贈与が行われていることになり、ただその受益権の行使に関して、委託者の死亡の時以後でなければ実行できないという信託方法です。

注意していただきたのは、第2号の場合には他益信託になりますので、設定段階で贈与税が発生します。

また第1号の場合、親から長男にという遺言代用信託の場合で、受託者を長男にしてしまうと、信託法第163条の規定により、受託者と受益者が同一になってから1年で信託自体が終了してしまいます。

信託法
(信託の終了事由)
第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
一.信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
二.受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
三.受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。


これを使えば、委託者が元気なときに設定しますので、ご家族も安心して財産を受け継ぐことができますよね。


2.受益者連続型信託

これは画期的な信託設定方法で、現行民法上での遺言の範疇では実現不可能であったことを実現できる可能性を秘めています。

何代も先の受益者候補者を、当初の委託者が決定しておけます。親から子へ、子から孫へ、さらにひ孫や玄孫に至るまで、自分の直系血族にのみ財産を相続させたい、裏を返せば「婚姻側に財産を流したくない」という考えを持ってらっしゃる方も多いかと思います。

この信託を活用することによって、親が元気な段階で長いスパンで財産の帰属先を決めておけることができます。


信託法第91条を見ると、2つの定め方があることがわかります。

ⅰ.受益者が死亡した際には受益者が消滅し、次順位に定められた受益者が新たに受益権を取得する定め。
ⅱ.受益者の死亡によって受益権が、次順位に定められた受益者に引き継がれる定め。

これを仮に委託者兼当初受益者A、二次受益者B、三次受益者Cという設定で考えてみると、ⅱの定め方の場合には、信託の受益権がA→B→Cに相続財産として相続されていくことになりますが、ⅰの定めの方は、A→Bの段階ではBにとってAからの相続財産としての受益権を受領したことになるものの、B→Cの段階では、B死亡時に受益権が消滅し、同時にCに対して新たな受益権が発生することになるので、理論的には受益権が一旦は既に死亡しているAに戻って、そこから新たにCに受益権が与えられることになり、その結果この受益権は誰の相続財産になることもないということになります。

これであればBの推定相続人からの遺留分請求ができないという結論になります。ただし、この信託には「30年ルール」が存在し、永久に財産の取得者を定め続けることはできません。これは、信託設定以後30年経過時点における受益者が指定した次の受益者が最終受益者となり、それ以降は認められません。

文字だけだと分かりにくいと思いますので、上の例を図表にしてみました。

 

zu5.png

 

 

この最大のメリットは、委託者、つまり財産を残したい人が、誰にどの順番で財産を承継させるかを自由に決めれるということです。例えば会社の決定権を左右する株の承継は、非常に重要ですよね。

遺言の場合は、長男に決定権を持たせるというところまでしか、決めることはできません。そのあとは長男に委ねられます。この場合、長男の奥さんのほうに株が流れてしまう可能性はありえます。しかしこの信託を使うことで、長男の次は次男、次男の次は長男の子ども、その次は長男の孫というように、元気なうちに決めることが可能になります。うまく活用することで、委託者の思い通りの承継が可能になります。

こうしたことでもめてしまうことも考えられますので、できる限り家族内で話をしていることが、うまくいくことに繋がるのは同じです。

 

少し長くなってしまったので、続きは次回です。

こうした知識を知ることで、相続に関する準便のきっかけにしていただければと思います、


では次回もよろしくお願い致します!